「世界のカラータウン」で世界の○○タウンを探してきましたが、今回は日本の「黒」がつく町を調べてみようと思います。
日本の「黒い」町
「黒」の印象
その前に「黒」という色について考えてみました。
黒はいい意味なのか悪い意味なのか。これを想像すると大きく二つに分かれると思います。ひとつは「悪や闇」という印象、そしてもう一つは「高貴」です。
悪い意味の「黒」は外国でも同じだと思いますが、やはり「暗闇」から連想されたことだと思います。「光のない世界の色」ということで、例えば黒いカラスを不吉に思うようになったのかもしれません。ただ面白いことに高級車の「黒」は全く別の印象を与えますし、戦国時代では黒の鎧がかっこ良かったらしく伊達政宗や徳川家康の黒甲冑を身に着けていたそうです。
「黒」の理由
世界の「色」のつく町では、人や会社の名前から来たものもありましたが、日本で「色」のつく地名は、「意味」ではなく直球で「色そのもの」が関係しているように思います。わかりやすく言えば、その「色」のついた「何か」がその周辺にあったのではないでしょうか。それを調べてみようと思います。
「黒」のつく地名
調べてみるとかなり多くの地名がありました。さすがに細部までは追うのは大変なので今回は「市」以上の「黒」のつく地名をご紹介したいと思います。
青森県黒石市
青森県の中央部に位置した人口3万2千人の都市です。観光としては八甲田山に続く山地で黒石市東部にある黒石温泉郷、現在でも江戸の古い町並みが残る「こみせ通り」や八月に催される「黒石よされ(踊り)」は黒石市の観光の目玉です。
「黒石」の地名が残る最古の記録として、鎌倉時代に書かれた手紙に「くろいしごう」という地名が書かれています。鎌倉幕府から派遣され当地を治めていた役人の家族の手紙なので、当地が「くろいし」と呼ばれていたことや、その手紙以前から当地が「くろいし」と呼ばれていたとわかります。また地名の由来ははっきりとわからず、先住民の住む土地を「クジシ」や「クニス」と呼んでいたことから、音が徐々に変化をして「クロイシ」になったのではと考えられています。
引用文献:黒石観光協会HPより
宮城県黒川郡
仙台市の北側に隣接する黒川郡は2021年の調べで人口4万1千人、2町1村で構成された郡です。郡内には奥州街道(江戸-弘前)の宿場町・吉岡宿の跡地や、万葉集で歌われた植物を主体とした森林公園・昭和万葉の森、江戸時代に仙台藩からヨーロッパに向かった慶長遣欧使節団(通称:支倉使節団)を率いた支倉常長の墓所があるメモリアルパークが観光スポットに挙げられます。
はっきりとした由来は探しきれませんでしたが、東北の歴史の中に「陸奥黒川氏」という一族がおり、鎌倉・室町時代ごろに最上家から別れ「黒川」を名乗っていたようです。江戸時代以前の宮城県中央部が黒川氏の領土だったとあるので、「黒川」は名前から来ていると思われます。
引用文献:
東京都目黒区
東京都特別区のひとつで2021年時点で人口28万6千人の都市です。「目黒」という地名がすでに有名かもしれませんが自由が丘や祐天寺があり、外国の大使館や東大・東工大・東京音大のキャンパスが区内にあります。
目黒区のホームページによると、「目黒」という地名は諸説あるということですが、その多くがやはり「音」から付けられているようです。字は違えど、「め」と「くろ」という音の組み合わせが、結果として「目黒」という字を当てられてできたとされています。
引用文献:
富山県黒部市
景勝地として有名な黒部峡谷のある黒部市は人口3万9千人の都市です。立山連峰・後立山連峰に挟まれた黒部ダムは別の市町村にありますが、黒部ダム、そして山から海へ向かう黒部川、峡谷を走るトロッコ列車が有名な観光地です。
「黒部市」の地名の由来は「黒部川」から来ているそうですが、「黒部」そのものの由来は、なんとアイヌ語に関係していると言われています。青森の黒石市の由来にも近い話です。
引用文献:
調べるまでは「色」そのものから付けられた地名かと思っていましたが、実のところは深い歴史に包まれた「謎」でした。しかし、共通点としては「音」から来ているのだろうということがわかり、とても興味深い話になったと思います。
またその「音」も、とても古い時代の名残かもしれないということ。
近年、縄文時代が見直されていて、それまで考えられていた「低文化」の世界ではなく、すでに稲作の技術もあり、主に日本海側を中心に南北の海洋貿易が行われていたとも考えられています。一見関係ないと思われるアイヌ語や古い時代の言葉が「黒」の地名に関係していたと知り、個人的にとても興味深い話でした。
いずれこれらの場所とブラックタウンが姉妹都市を結んで「黒い兄弟(煙突掃除夫の話)」ならぬ「黒い姉妹」になれば面白いと思っています。